カテゴリ:SS-ハルヒ( 5 )

不定期連載「SOSのある生活⑤」

「SOSのある生活」これまでの荒筋というか粗筋というか辛筋 

「そんなの決まってるじゃない♪」
パイプ椅子に座りハードカバーに集中している銀髪の女の子を後ろから抱きしめる。
「長門さんに会いにきたんだから!」
にっこり微笑み頭を撫でる。
体格でいうなら朝倉が姉、長門が妹というパワーバランスなんだろうが、
俺にしてみればそれこそ、妹が不定期で俺に甘えてくるそれに似たような感情を抱く。
「なーがーとーさーん」
対し文字通りその手中にあるちっこい女子生徒は、まるで肩に埃が乗っているかのように反応しない。
「もう! 長門さんってば! 私よ! 貴女の心強い仲間の朝倉よ!」
右の頬をぷくっと膨らませてペチペチ肩を叩いて、どうにかして注目されようとする動作。
最早高校生には見えない。親に玩具を買って貰えない女の子だ。

しかし、何故だ! 何故こうも和まない! 和めないんだ!
クラス内の尊敬の的である、大人びた女性の知らない一面を知った優越感なんて感じる余裕もなく、
ただ俺は俺しか知らない、純粋無垢に「じゃあ、死んで♪」と言えるあの朝倉涼子をフィードバックさせている。
こんなもの優越感になるか!


「ふっふっふ。君らのアイドル朝倉涼子は、実はこの俺を殺そうとした事があるんだぜ?」

その日からでした……。
みんな、僕から机を遠ざけ、僕と関わり合う事を避けるようになりました。
あれほど仲の良かった筈の悪友二人と、一緒にお弁当を食べる事も無くなりました。
後ろにいた女の子は、
「キョ、キョン。疲れてるなら部活、長めの休みあげようか……」
と心配してくれました。
でもそれは事実上の解雇。
僕は、真の意味で孤立したのです。

BADEND505 「狂言」


そ、そんなのは嫌だ!
イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ!
ま、まず落ち着くんだ!
えーとなんだ、素数を数えるんだっけ? 4,6,8,9,10……。
いや深呼吸だ。スーハースーハー。ヒーヒーフー。

「それはラマーズ法……」
一瞬にして凍えそうな室温になる。
俺の頭もようやく適温へと戻った。
「まぁ待て話を戻そう。どうして会いに来たんだ。それを言え」
「そんなの、会いたかっただけよ」
理由になってない。こんな回答で許されるのなら俺も来週の数学のテストは安泰だ。

「長門さんも私に会いたかったんでしょ?」
「…………」

俺は耳を疑った。
「……えーと長門さん、よく聞こえなかったんだけど……」
良かった。朝倉も同じだ。疑ってすまん、俺の愛する両耳。

「『……そうでもない』と言った」
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by lion-cage | 2007-07-17 01:58 | SS-ハルヒ

不定期連載「SOSのある生活④」

SOS団部室。
実際はただ一人の文芸部員のために用意されている部室である。
団なのに部室なのかなんていう些細な質問は哲学者にでも丸投げする事にして,俺は軽くノックをして入る。

考えてみると,あの年中快晴頭女が設立した活動内容意味不明の団に部屋を預けるなんて事はありえなくとも,
部員数一名の,活動そのものが不明な部活には部屋を用意できているんだよな。
なんだか若干腑に落ちない気分だぜ。

文芸部員はいつも通り一人で昼休みのみの部活動を行なっていた。
まぁ俺も文芸部の正しい活動内容を把握しているわけではないので読書をそれに当てはめていいものか自信は無いのだが。

「よう」
右手を上げて挨拶をする。
対し首を5度くらい傾けて返事する長門。
「ちょっと聞き――」
「待って」
長門は俺が読む台詞を遮る様に言った。
「来る」
「来るって……誰が」
「当事者」

長門がワードを言うと同時に扉がバンと乱暴に開けられた。あまりの衝撃に蝶番が悲痛な叫びを上げる。
「長門さんいるー?」
「あ,朝倉……」
「あら,キョン君もいたんだー。こんにちわ,キョン君」
まるで俺がここにいるのが好都合と言わんばかりに微笑む黒髪の少女。
その笑顔に,俺は何故か知らないが入学当初クラスの委員長を受け持っていた朝倉との違和感を覚えた。
満面のスマイルにからは,我が愛妹にも通ずる何かが染み出てきているようなそうでもないような。
「えーと……色々聞きたいんだが朝倉,とりあえずここに何をしに来た」
(後ほど更新)
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by lion-cage | 2007-04-06 19:43 | SS-ハルヒ

不定期連載「SOSのある生活③」

朝のホームルームを終え、俺はジトジトした不快な空気、いやここまで来ると最早瘴気と表現した方が正しいのだろうか、
兎に角、視覚で言うと『黒』、触覚で言うと『粘』だろうイメージを背後から感じ取っていた。

「何よ……」
あーああーあ、我らがプリンセスは大層不服な面持ちなようで。
まぁ、それを振り向かずにして理解する俺も、もうこいつの毒に侵されきっているわけなんだが。
「……朝から一体どうしたんだ。悪い夢でも見たのか」
90度体を動かして後ろを見る。
「違うわよ。規則正しい生活をしている私に、悪夢なんて見てる余裕無いわ」
顎を机の上に乗せて脱力するハルヒ。
言っている事に因果関係が掴めないのはいつもの事だ。
「全く、あんな理不尽な時期に転校したんだから、ちょっと期待しちゃったじゃない」
ハルヒが言ってるのは多分あいつの事だろう。

「諸事情で日本に戻ってきました。皆さん、お久しぶりです」
ホームルーム、カナダから緊急帰国した(という設定になっている)朝倉は、
それこそ皆を幸せに出来そうなスマイルで元気良く挨拶した。
元々委員長として働いていた朝倉だ。クラス全員が彼女の復帰を心から喜んでいた。
当然、一歩間違えればあいつの代わりにこのクラスからいなくなっていただろう俺と、この後ろでへばってる奴は除くが。

ハルヒに言わせれば、
入学してすぐに海外へ転校した朝倉には絶対何か裏があると踏んでいたようで、
一度は諦めていたが、いずれ真実を明かしてやろうと思っていたらしい。
それなのに結果朝倉がケロリと戻ってきたものだから、狙っていた遺跡を先に見つけられてしまったようなショックを受けたことだろう。
「ねぇキョン」
右頬を机に押し付け空を見つつ喋るのは年頃の女の子として正直どうなのか。
「私はね、てっきり朝倉さんは宇宙人にさらわれたと思っていたのよ」
『宇宙人』という単語にビクッとする。
「でそれを自然に纏め上げようとした宇宙人によって全人類へ洗脳が行なわれたのよ。
だってそうじゃない? あんなタイミングで転校よ? みんなだって絶対おかしいって思うはずじゃない」
なんでこいつはこうも的外れな中にピンポイントど真ん中ストライクを決めてくるんだ。

朝倉の方を見ると、机の周りにはクラスの女子達が我先と押し寄せていた。
「ねぇねぇ、カナダの料理って美味しい?」
「うーん、正直豪快だったけど私にはちょっと無理だったかな」
作り話をあそこまで真に迫って言えるのも、
あいつがどんだけ分厚い猫の毛皮を羽織っているのか知ってる自分にしてみればおそるるに足らない。

「あーあ、どうしてこう事実っていうのは単調でつまんないの!?」
「おいハルヒ。前にも言ったが、不思議な事がそんな石投げて当たる様に存在する筈が無いだろ。
様々な途方も無い現象の中に一つだけあるから不思議って言うし、それこそ追求するに相応しい存在だろ?」
「五月蝿い。それにくさい」
……やれやれ。

「おいおいキョン、これってあれか、俺と朝倉の間を結ぶ赤い糸が呼んだ奇跡か。いや、これは運命だな。離れ離れになっても互いに惹かれ合う……うーむ絵になる」
「とりあえずハルヒ、こいつの脳とか手始めに弄ってみたらいいんじゃないか」
「嫌よ」

コールタールのような圧迫感の気配を背後に浴びつつ午前の授業をどうにか凌ぎ切った俺は、
昼休み、弁当も半ば、事の真相を誰よりも知っていそうな奴に会うため、ある場所へ向かった。
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by lion-cage | 2007-03-31 15:21 | SS-ハルヒ

不定期連載「SOSのある生活②」

えーと、この首のナイフで、というか顔見えてるし確信は出来てるんだけど、
脳が目の前の存在を認知しまいと必死で抵抗してるんだが……。

「『あさ』までは良かったんだけどなぁ。『h』の子音はいただけなかったな」
満面の笑みで、しかし凶器を握り締めた右手は微動だにさせず、女は台詞を繋ぐ。
「もう! ちょっと前まで同じクラスメートだったのに酷いよキョン君」
頬をぷくっと膨らませる表情は、大人びた容姿を『可愛い』にダウングレードさせるのには十分で、より一層、その心の奥に潜む殺意を分かり易く捕らえられた。

「朝倉……なんでここに」
実際に当てられている訳でもないが、最早首と胴が繋がっていないかのような息苦しさを感じつつ、
肺に残っていた少ない二酸化炭素で疑問を紡ぐ。
「キョン君に会いたかったからかな」
ニッコリ笑いつつ答える目の前の女。
転校した幼馴染ならまだしも、一度殺されかけた相手にそんな風に言われたところでタチの悪いジャパニーズホラー映画のワンシーンだ。
実際ちょっと今朝倉がクシャミでもしてみろ。スクールゾーンが鮮血に染まるぞ。

「……嬉しそうじゃないね」
これを嬉しい状況と思えるほど、俺は特殊な性癖は持ち合わせてはいない。
「私の事嫌い?」
飛躍した発想につっこめばいいのか、言動の不一致につっこめばいいのか分からん。

「と、兎に角この危なっかしいものを仕舞ってくれ」
全身硬直しつつ口を動かしすぎない程度にアピール。
喉が必要以上に振動したら前述の通りだ。この連載もあっけなく終焉。作者的には万々歳なんだろうが。

「あら、いけないいけない」
朝倉は自分の右手を改めて見て頬を赤くする。
まるではしたなく食事していたのを親に注意された子どもの様だ。
手を開いてナイフを地面に落とすと、先ほどまで渋く光っていたそれはさーっと消えていく。
俺は足腰に力が入らずその場に崩れる。
「つい癖で突きつけちゃってた」
……癖なんかで殺されかけたら、いくら階段で亀踏み続けても需要と供給がマッチしないぜ。

朝倉はおでこを手で抑えるポーズをして反省している。
俺の専売特許を取られてしまった。著作権の侵害だ。使用料寄越せ。
「だって、久しぶりでつい嬉しくなって」
「喜びを殺人衝動にするな」
「それはそうと、そろそろ学校始まっちゃうよ?」
そういえば目の前の殺人未遂女、やけに自然だなと思ったら、ウチの学校のセーラー服着ていやがる。
まぁこいつが普段着を着ている姿は生前(?)見た事無かったけどな。
「それはそうよ。だってまたこっちに転校してきたんだから。カナダは楽しかったよキョン君」
その点は長門の情報操作にあくまで忠実だった。
「とりあえず立ち話はこれくらい、聞きたい事があったら休み時間でも放課後でも私を捕まえてね」
そう言いながら、まだ地面に座り込んでいる俺に手を差し伸べる朝倉。
柔らかい笑顔は、夏手前の陽気には一際眩しい。

握り返した手に、これから何かが起きるだろうという期待、そしてそれ以上の不安を俺は感じていた。

(続く)
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by lion-cage | 2007-03-23 19:23 | SS-ハルヒ

不定期連載「SOSのある生活①」

梅雨を抜けどうにかじめっとした日々が終わり、自転車をこぐだけで額に汗が込み上げてくる今日はもう7月である。
なんでこんな山の上に高校があるのかという愚痴はもう言い飽きるほど言った。
俺の学力を持ってして入学した学び舎である。文句を言っても自虐にしかならない。
とにかく外よりは涼しいであろう学校を目指し上り坂を一歩一歩踏みしめるだけである。
 
4月に入学して早3ヶ月。1/4年と表現すると、より一層重量を増す。
こんなにもすぐ過ぎ去ったと感じるのは、まぁ今更言う必要も無いだろう。
これから学期末のテストを受け、夏休みに入れば、更なるトンデモイベントに振り回されるのは確実なのだ。
それに比べれば、登校の時間なんてあまりに平和だ。大事に大事にしておきたい――。
本日も晴天なり。善哉善哉。

「キョン君。おはよ♪」
 
夏服の首元をパタパタさせつつ登校していると、後ろから声がかかった。
……何故か聞いた事あるような無いようなそんな声だな。
では、推理を始めよう。

ヒントは3つ。
①明らかに女性のものだった。
②テンションが高めである。
③『キョン君』と呼んだ。

まず①。
これにより谷口、国木田、そして古泉説は除外だ。
まぁ古泉が『キョン君』なんて言ってみろ。振り向き様にバックナックルだ。してそこからキャンセルでサニーパンチだ。

続いて②。
これで除外されるのは長門だ。
そもそも長門のキャラクターで朝俺に会った程度で挨拶をするのか。
見た事は無いが多分思うところに、小さ目の文庫本へ顔向けたままこの坂を上がっていってるんだろうな。
それなら俺の姿は見えないはずだ。よし、Q.E.D.。

最後に③。
これであの唯我独尊女はめでたく外される。あいつは俺を呼び捨てする。

ああ、読者に言っておこう。
俺たちのドタバタ活劇をひとしきり小説で読んでるもしくはアニメーションで見ているという素晴らしい方々なら重々理解していると思うが、現時点で俺は超ロング緑ヘアー豪快ハイテンション先輩、一部ではデフォルメ化されて社会現象にまでなっているあの人とはまだ出会っていない。
こんな説明をするだけ野暮ってものだが、どうやらこれを書いている作者が最近読んだ某小説に影響されて、時間軸的にはありえない筈の解説を本文に挟むパワープレイをしたかっただけのようなので、俺はそれに渋々了解しただけである。

話を戻そう。
んで今までの消去法により誰なのかは把握できた。
あの容姿端麗にしていい意味でアンバランスな体形、SOS団の癒し系ことあさh――

「残念。もう私の声忘れちゃってたんだ?」

……そこには念が残り過ぎて自縛霊までいっちゃったような奴が笑顔で立っていた。
あの、愛用のサバイバルナイフを俺の首筋ギリギリまで伸ばしながらな……。


(続く)
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by lion-cage | 2007-03-20 20:10 | SS-ハルヒ